Lesson17 フラックスシード(Flaxseed)

日本では今、ココナッツオイルやオリーブオイルをはじめとして様々なヘルシーオイル・美容によいオイルが流行していますが、その一つがフラックスシードオイル(亜麻仁オイル)です。

フラックスシードとは亜麻の実のことであり、その実から抽出されるのがフラックスシードオイルです。

フラックスシードの歴史

人類が初めて栽培した植物ともされている亜麻の原産国は、ヨーロッパの地中海地方で、歴史的記述には石器時代からスイス湖畔に住んでいた古代人により繊維分と種子が利用されていたとの記録もあります。

また紀元前7000年のトルコやシリア、紀元前5000年代のエジプトでも栽培されており、茎から取れる繊維質を使用した亜麻仁布(リンネル)はミイラを包むことにも利用されていたことでも有名ですが、イエス・キリストの遺体を覆った「トリノの聖骸布」もリンネルであったと考えられています。

西暦800年代となると、食用としての広がりも見せはじめ、フランスのカール大帝により、臣民の健康向上のためアマニを摂取する法令が出されたこともあったようです。
この頃からフラックスシードからオイルを抽出する技術も発達し、中世から近代にかけてアマニの栽培はヨーロッパ全域にひろがりました。

寒冷地に適している亜麻仁の栽培は、北米やカナダが現在生産量の1/3〜半数を担っており、南半球ではオーストラリアやニュージーランドなどでも栽培されています。

日本へ亜麻が伝播したのは江戸時代の頃で、明治以降大々的な栽培が行われるようになりました。北海道札幌市には「麻生(あさぶ)」という地名がありますが、これは麻(ヘンプ)ではなく、北海道の亜麻発祥の地として名付けられたようです。

その後第二次世界大戦後の化学繊維の普及により、栽培は一次下火になりましたが、2002年あたりから種子を食用に利用するために北海道の当別町で亜麻栽培が復活し、北海道特産品として、スーパーフードとして亜麻仁の評価が高まるにつれて、再び栽培する地域が増えています。

特徴

フラックスシードは茶色い胡麻のような小さな粒で、日本では種子をそのまま食する文化はあまりなく、パンや焼き菓子に入れるかペットフードとして利用される程度でした。

しかし近年欧米諸国でスーパーフード、スーパーシードとして話題となったことから、日本でも注目が集まっています。

近年の天然素材やエコに対するブームから、麻布(リネン)の人気が高まっています。
日本ではリネン(亜麻)もヘンプ(大麻)も「麻」と総称で呼ぶことが多いため混合されがちですが、その製品には違いがあります。

一般的に麻と言われてイメージする少しゴワついた繊維はヘンプ(大麻)で、比較的滑らかで光沢がある繊維が亜麻です。

食用としても大きな可能性と広がりをみせるフラックスシードは、雑穀入りのパンやシリアルに加えられるだけでなく、家畜や養鶏の餌としても注目されており、フラックスシードを食べた動物の肉や卵は海外でも特別表示され販売されています。

栄養成分

オメガ3系脂肪酸・α-リノレン酸の宝庫

フラックスシードの最大の特徴は、オメガ3系の不飽和脂肪酸(α-リノレン酸)が豊富な事です。
重量の約4分の1がα-リノレン酸であり、食品の中でこれほど多く含むものはないと言われています。

良質な油は、健康のために非常に大切です。

特に現代人に不足しがちなα-リノレン酸は、体内に入るとEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)へと変換されます。

EPAやDHAは青魚に含まれる油としても有名ですが、コレステロールや中性脂肪を低下させる働きや、血液をサラサラにしたり血管を柔軟にするなどの働きを持ち、動脈硬化や心筋梗塞、生活習慣病予防に有効とされています。

またオメガ3系脂肪酸の摂取は、アトピー性皮膚炎や花粉症などアレルギー性疾患の緩和に役立つと考えられています。
良質なオイルの摂取に関しては、多価不飽和脂肪酸であるオメガ3とオメガ6をバランスよく摂取することが大切ですが、現在多くの方はオメガ6系の脂肪酸の摂取量ばかりが増えていることが指摘されています。
オメガ6系の油が過剰となりバランスが崩れると、免疫バランスが崩れ、アレルギーなどの炎症が起こりやすくなるのです。

そのほか、オメガ3系脂肪酸の摂取によるメリットは様々で、記憶学習能力の向上や脳細胞(脳機能)の維持による認知症発症リスク低減やボケ防止、細胞膜や細胞間脂質の元となるため美肌作りにも役立つとされています。

女性にうれしい(亜麻)リグナン

フラックスシードにはポリフェノールの一種である「(亜麻)リグナン」が含まれています。
リグナンとは、女性ホルモンのエストロゲンに似た構造や作用を持つフィトエストロゲンと呼ばれる成分です。
大豆イソフラボンなどでも有名なこのフィトエストロゲンですが、更年期障害などのホルモン分泌量の急激な低下によって起こる症状の予防や緩和に役立つとされ、またエストロゲン減少による骨粗鬆症の予防に有効であるという報告もあります。

また、このフィトエストロゲンは過剰なエストロゲンの作用を弱める働きもあり、そのことからエストロゲン過多によるPMS(月経前症候群)などの緩和にも有効とされています。
このようにエストロゲンの極端な過剰や不足が緩和されることにより、月経不順や生理痛など女性の月経関係の不調全般の緩和が期待出来ます。

 

そのほかに食物繊維やベータカロチンやビタミンEなどのビタミン類、鉄分・カルシウム・亜鉛などのミネラル分と幅広い栄養素を含んでいます。

  • オメガ3系脂肪酸
  • (亜麻)リグナン
  • βカロテン
  • ビタミンE
  • 食物繊維
  • 鉄分
  • カルシウム
  • 亜鉛・・・など

期待できるメリット

  • コレステロール値や中性脂肪の低下
  • 血液をサラサラにする
  • 血管を柔軟にし、健康に保つ
  • 免疫力向上
  • アレルギー疾患に有効
  • ボケや鬱の防止
  • 記憶力向上
  • 美肌作り
  • 便秘改善
  • 女性特有の不調の改善・・・など

選び方・利用方法

海外では広く流通し、素メリットが多くあるフラックスシードですが、日本では生のフラックスシードは、厚生省の規制により輸入制限されています。

もし海外でフラックスシードを見かけたら、ぜひ口にしてみてください。

国内で手に入りやすいフラックスシードはパウダー状になったものや、オイルを抽出したフラックスシードオイル(亜麻仁オイル)などがあります。

オメガ3系脂肪酸は大変に繊細で、酸化に弱く加熱調理には適しません。
そのためフラックスシードオイルやフラックスシードパウダーは、加熱せずできるだけ生食が必須です。

一方、生のフラックスシードは硬い殻に覆われているため、オイルやパウダーなど加工されたものよりも酸化しにくいメリットがあります。

最近では穀物入りパンの素材として、ベーグルやマフィンのトッピングとして使用されることが増えており、シリアルやマフィン、パンケーキ、ワッフルなどのドライミックス、エネルギーバー、グラノーラなどのスナック、粉末状の飲料ミックス、パスタなどにも利用されています。

また自宅でフラックスシードを使う場合には、スムージーにプラスすると硬い殻も撹拌され、摂取しやすくなります。

詳しいレシピなどはLesson28-15を参考にしてください。