Lesson27-3 日本のスーパーフード①発酵食品Ⅱ

納豆

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納豆も大豆の発酵食品として有名ですが、様々な効果が語り伝えられています。

古くからの伝承や、医学的に立証されつつあるものまで、その多くの効能はスーパーフードというに値するでしょう。

大豆は畑のお肉と言われるほど良質なたんぱく質を有していますが、生のままでは消化されにくく、自然の大豆は強い反栄養素を有するという欠点があります。

しかし古代中国において、特定の菌を繁殖させることで、酵素分解の働きにより大豆に存在する毒素が破壊され、大豆の中の栄養分が身体に摂取可能な状態になることが発見されます。
これにより、納豆を代表とする発酵大豆食品は大豆の持つ欠点を解消し、さらに良質なたんぱく質や脂肪分などといった高い栄養価を持つ、消化吸収に優れた食品となりました。

大豆自体が持つ良質なたんぱく質や大豆イソフラボン、大豆サポニンや豊富なビタミン・ミネラルに加え、納豆菌による発酵過程でナットウキナーゼやビタミンK2、ビタミンB群などの栄養価がプラスされているのが、日本が誇るスーパーフードと呼べる納豆なのです。

ナットウキナーゼによる血栓溶解

納豆特有の酵素であるナットウキナーゼは、血栓の主成分とされているフィブリンを分解・溶解促進する効果を持ちます。
また、血栓溶解酵素として知られているウロキナーゼやプラスミンを活性化する作用があることも確認されており、血液をサラサラに保ち、動脈硬化の予防効果も期待できます。

ビタミンK2によるカルシウム吸収率の向上

現代人に不足しがちなミネラルの一つにカルシウムが挙げられますが、カルシウムを栄養素として体内に取り込み、骨を丈夫にしたり、また骨粗しょう症などを予防しようとした場合には、カルシウムを骨に結合させるγ一カルボキシグルタミン酸が必要となります。
このγ一カルボキシグルタミン酸を体内で生成するために欠かせないのがビタミンK2であり、あらゆる食品の中でも納豆に多く含まれています。

この納豆の摂取(ビタミンK2の摂取)と骨粗しょう症の関連性は実際に調査されており、納豆を多く食する地域では大腿けい部を骨折する女性が少なく、逆に消費量の少ない地域の方が骨折の頻度が高いという傾向も発表されています。

整腸作用

納豆菌はその生命力の強さでも注目を集めていますが、他の腸内細菌と比較してもその生命力の強さは圧倒的で、整腸効果が高いとされています。
一度体内に入った納豆菌は、分裂繁殖を繰り返しながら大腸全体に広がり、何日も腸内で活動しています。
納豆菌は腸内まで生きて届く希少な菌の一つであり、善玉乳酸菌の繁殖を助け、新たな栄養成分をつくるなど、様々な働きを行っていると考えられています。

これにより、腸内細菌のバランスを整え、下痢や腸炎を予防、便秘予防にも繋がります。

この他、食欲のコントロールを助ける働きや、脂肪の吸収抑制効果、基礎代謝向上、高血圧予防、コレステロール低下、脳の活性化、大豆イソフラボンなどによる女性ホルモン低下に関わる症状の予防や精神の安定などの健康効果が期待できます。

未発酵大豆の反栄養素に関して

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自然の大豆には反栄養素があることを最初に少しだけ触れました。
この反栄養素は人体に有害なものであり、その代表として、フィチン酸塩、酵素阻害物質、ゴイトロゲン(甲状腺腫誘発物質)の3つが上げられます。

これらの反栄養素は、もともと大豆が、生存・繁殖のために自分が外敵から身を守るための植物が持つ免疫システムであり、植物としての本来の生命力とも言えるでしょう。
しかし、人体にとっては有害なものであり、これらの反栄養素は発酵という課程を経ることで無毒化されると言われています。

未発酵の大豆製品の代表として、植物性代替乳として日本では人気が高い豆乳が挙げられますが、反栄養素が残る生の大豆製品である豆乳は、消化機能の衰弱、免疫システムの故障、PMS(月経前症候群)、子宮内膜症、男女双方の生殖障害、アレルギー、注意欠陥・多動症、心臓病、ガン、栄養失調、性欲減退など、人体に悪影響をもたらすことが、様々な研究により明らかとなっています。

またタンパク源として豆乳を摂取している方も多くいますが、この反栄養素はタンパク質の吸収を阻害し、さらにカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などの重要なミネラルを吸収を阻害することが分かっています。

これらのことから、未発酵の大豆製品は栄養摂取源としてあまり適しているとは言えません。

私たちは、「その食品にどれくらいの栄養素が含まれているか」だけではなく、「実際に摂取した場合、体の中でどのように吸収、利用することができるのか」までしっかりと考慮し、食品を選ぶ必要があります。

甘酒

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「飲む点滴」と称されるほどに栄養豊富な甘酒は、江戸時代には夏バテを防ぐ夏の栄養ドリンクとして活用されてきた歴史を持ちます。
米を発酵させているため糖質が吸収しやすい形になっており、体力回復効果が高いのが特徴です。

豊富なビタミンB群による疲労回復効果

発酵食品の一つである甘酒は、麹菌が繁殖する際にさまざまなビタミンを生成します。
代謝を促すビタミンB群(ビタミンB1・B2・B6・ビオチン・パントテン酸など)が豊富に含まれ、夏バテの改善や予防に役立ち、疲労回復にも力を発揮します。

美肌効果やダイエット効果

また代謝促進効果や、オリゴ糖や食物繊維により腸内環境を整える効果を持ち、美肌効果やダイエット効果も期待できます。
さらに麹に含まれているコウジ酸にはシミの原因となるメラニン色素を合成する酵素の働きを抑制する効果があります。

甘酒の種類と選び方

甘酒には、米麹と米で作られているもの、それに砂糖などが添加されているものや、酒粕が使用されているものがあります。

お勧めは米麹と米だけで作られた甘酒です。
丁寧に作られた甘酒は発酵食品として菌が生きています。

一方、大量生産されたものは、発酵が不十分で甘さが足りないことを補うために砂糖を添加していたり、製品化した際扱いやすいように高温で加熱し、麹菌を殺してしまっているものなどがあるため、信頼できる製法のものを選ぶことが大切です。

甘酒は比較的簡単に手作りすることもできるため、素材にこだわって手作りしてみるのもお勧めです。