Lesson5-1 ヘンプ(Hemp)①

ヘンプシード(麻の実)やヘンプオイルは、近年日本でも急激に注目度が高まっているスーパーフードです。

ヘンプ」と聞くと初めて耳にする方も多いかもしれませんが、「麻」は日本でも馴染みが深い植物でしょう。
スーパーフードとしてはこの麻の種子を用い、ヘンプオイルやヘンプナッツ、ヘンプシード、ヘンプミルクなど、その活用法の広さから海外でも日本でも人気が高まっています。

実はこのヘンプは、食料としてだけではなく、紙や繊維として様々な場面で人類を支え共に歩んできた長い歴史があります。

ヘンプ(Hemps)

Healthy Organic Hulled Hemp Seeds in a Bowl

学術的分類:アサ科アサ属
学名:Cannabis sativa L. 

ヘンプの歴史

中央アジアが原産とされるヘンプは、ヒマラヤ山脈の北西山岳地帯周辺の過酷な地域でも育成できるように、大変強い生命力を持ち合わせています。

育成速度が早くわずか4ヶ月で4m近く成長することもあり、環境への順応性が高く世界中のほとんどの地域で栽培が可能です。
また、その強い生命力から育成において農薬や除草剤などをほとんど必要としないのも特徴です。

その歴史は古く、ヘンプによる産業・製造業は一万年以上前には誕生していたと言われています。歴史的書物にもその記載は多く、紀元前8000年以前のヘンプの織物や、紀元前16世紀には古代中国でのヘンプ栽培についても記載があるほどです。

日本におけるヘンプ(麻)は、古来より自生しており「神の象徴」として神道との関連性も強かったようです。
しかし第二次世界大戦後、国内では大麻の栽培が禁止となっています。

ヘンプは未知の可能性を秘めていたことから、アメリカでは1937年、「ポピュラーサイエンス」誌において「富を生む新たな作物」として紹介されています。
ヘンプ紙の製造、ヘンプロープの利用、ヘンプシードの燃料化、さらに大麻(マリファナ)など、激動の世界史的事件にも関わっていました。

アメリカ独立宣言に使用された紙も、ヘンプ紙だとされています。

2度の世界大戦を経て、現在では各国においてヘンプの栽培や所持、利用については法律で厳しく規制されています。

特徴

活用法の幅が広い

ヘンプの特徴の一つに、その活用法の幅広さが挙げられるでしょう。
根、葉、花、果実など、その全てを利用することができます。

  • 根・・・土壌改良
  • 茎の芯・・・燃料、紙、プラスチックの原料
  • 葉・・・肥料や飼料
  • 茎の皮・・・繊維や糸やロープ
  • 油(ヘンプオイル)・・・食用や、医療、燃料
  • 種・・・食用(スーパーフード)、化粧品

このようにヘンプには不要な部分はなく、木材や綿、石油で作られているものは全てヘンプで製造することができるのです。

ヘンプと大麻・マリファナとの関係

スーパーフードとしてのヘンプと、麻薬としてのマリファナ(大麻)の関係について、気になる方も多いことでしょう。
この2つがとても近しい存在だということに、驚かれる方も多いのではないでしょうか。

ヘンプとマリファナは、どちらもカンナビス(Cannabis)という種に属しています。
この2つを大きく隔てているのは、デルタ9テトラヒドロカンナビノール(THC)の含有量の違いです。

デルタ9テトラヒドロカンナビノール(THC)とは、精神活性成分とも言われますが、わかりやすく言うと麻薬成分の一種です。
マリファナの花には多量のTHCが含有されています。
その平均的なTHCの値は3〜20%と言われており、マリファナとして使用されるには20%以上含有しているものが利用されます。

一方スーパーフードとしても扱われる食用のヘンプは、繊維や種子、オイルの産出量が最大になるように改良された別の植物であり、このTHC含有量も非常に低く、0.05〜1%に満たない値のものです。

このようにマリファナとヘンプは、百種もの亜種があるとされるカンナビス種の中でも別のものとして扱われています。

しかし、ヘンプとマリファナはよく似ていることから、ヘンプの畑でマリファナを栽培しているのでは?食べても大丈夫?と心配される方もいるかもしれません。

実際はヘンプとマリファナを同じ畑で栽培すると、マリファナのTHCは確実に減るとの研究がなされており、マリファナとしての利用価値がなくなります。

ヘンプシードに微量のTHCが含まれている可能性は、米国でも日本でも0%ではないと言われています。
しかし、例えばヘンプシードを2.3㎏摂取してもTHCは5mg以下となり、人体に影響を与える値にはなり得ません。
このようにさまざまな研究もされていますので、ヘンプシードの摂取によりマリファナのような高揚感を得るような効能や影響を受けることは、ほぼないと考えてよいでしょう。

栄養成分

理想的なオイル

ヘンプシードの約47%を占めるのはオメガ3系脂肪酸とオメガ6系脂肪酸であり、これらは現在身体にいい油として大変注目されています。

このオメガ3とオメガ6のオイルは摂取バランスがとても重要となりますが、ヘンプシードにはこの2つが理想的なバランス(オメガ3:オメガ6=1:4)で含まれています。

さらに、必須脂肪酸である6種類の脂肪酸が全て含まれているのも特徴で、特にオメガ6系脂肪酸の一種であるガンマリノレン酸が含まれているのは、植物では大変希少です。

このガンマリノレン酸には、血圧や血糖値、悪玉コレステロールと呼ばれているLDLコレステロール値を下げる働きがあり、皮膚生成や抗炎症作用にも優れているため、欧米ではアトピー性皮膚炎や関節症の治療にも用いられています。

バランスのよい貴重なタンパク源

ヘンプシードには、タンパク質が豊富に含まれており、完全タンパク質源の一つとされています。

ヘンプシードのタンパク質は、天然成分の高純度で消化しやすいタンパク質であり、特にアンチエイジングや活力の源となる持久系必須アミノ酸と呼ばれるBCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)が豊富です。

私達の体組成における筋肉内の必須アミノ酸は30〜40%がBCAAで構成されています。
そのため、これらが豊富に含まれるタンパク源は筋肉の修復や疲労回復に大きな役割を果たすことがわかっており、トレーニング前後のための「ヘンププロテインパウダー」なども商品化されています。

「植物性のヘンプがタンパク源となる」というのは意外に思われる方もいるかもしれません。
実際に現在の日本ではタンパク質源としては動物性食品がメインに扱われていますが、実は動物性タンパク質よりも植物性タンパク質の方が、利点が大きい場合もあります。

植物性の高品質なタンパク質アミノ酸に分解しやすく、消化や吸収にかかる体の負担が小さいため、効率よく私達の体に利用することが可能となります。
動物性タンパク質と比較して遺伝子組み換え飼料や飼育状態などからくる毒性の影響がないこと、ベジタリアンでも摂取できることから、多くの人々にとって貴重なタンパク源となります。

豊富なミネラル

ヘンプは土壌から豊富なミネラルを吸収することで、微量ミネラルを多く含有しています。

血液の材料となる鉄、ビタミンCの複合体を構成し白髪の改善にも役立つ銅、現代人に最も不足しているミネラルであり美容ミネラルである亜鉛、デトックスには欠かせないマグネシウム、骨密度の改善に役立つリン、エネルギー活用には欠かせないカリウム、それ以外にも、硫黄、カルシウム、マンガン、ナトリウム、シリカ、プラチナ、ホウ素、ニッケル、ゲルマニウム、スズ、ヨウ素、クロム、銀、リチウムなどの微量ミネラルを含んでいます。
(※含有ミネラルについては『Drugs Masquerading as Foods』Suzar著より)

免疫力向上効果

ヘンプに含まれる主要なタンパク質はエディスチン(エデスチン)であり、これは植物性グロブリンとも呼ばれています。

グロブリンとは、2種類の血漿タンパクのうちの1つで、他のタンパク質を包みこむタンパク質の総称です。
もう一つの血漿タンパクであるアルブミンと比較して水に溶けにくいという特徴を持ちます。

グロブリンは免疫機能に大きく関わっており、新たな細胞組織の生成や損傷組織の修復に必要な原料の運搬、細菌への抵抗力の向上、ウイルス、バクテリア、有害な菌やガン細胞の破壊をする役割を担っています。

ヘンプシードはグロブリン生成の素材として最も優れているとも言われており、私達の免疫機能が正常に働くことの手助けとなります。

アンチエイジング効果

ヘンプシードに含まれるカンナビシンAは、不老長寿の成分とも言われています。
免疫力の向上や高品質なタンパク質と脂肪酸との相乗効果により、高いアンチエイジング効果が期待できます。

ビューティー・若い女性

ヘンプシードに含まれる栄養素

  • 亜鉛
  • マグネシウム
  • リン
  • カリウム
  • 硫黄
  • カルシウム
  • マンガン
  • ナトリウム
  • シリカ
  • プラチナ
  • ホウ素
  • ニッケル
  • ゲルマニウム
  • スズ
  • ヨウ素
  • クロム
  • リチウム
  • 不溶性食物繊維
  • 必須脂肪酸
  • 必須アミノ酸
  • カンナビシンA